私たちがある病原体に感染した場合、体の中の免疫システムがその病原体を認識、作働、排除していきその記憶を残します。その記憶のおかげで同じ病原体の再感染には迅速に対応でき発病を免れることができます。これと同じことを人為的に行わせるのがワクチンによる予防接種という事になります。感染に伴う合併症(後遺症や死亡)のリスクが危惧される病原体に対してそのパワー(病原性や毒性)を弱めたり、なくしたりした上で、免疫に認識してもらうための病原体の形(全部または一部)だけ残したものがワクチンなのです。よってこれを接種すればパワーは弱いため発病することなく免疫システムが認識、記憶を残しますので、いざ本当に病原体が入ってきたときには迅速・処理し病気にかからずにすむという訳です。
生の病原体による自然感染の場合、パワー(病原性や抗原性)が多いので、体の中には強い免疫(記憶)が残りやすいですが合併症(後遺症、死亡)も出やすくなります。このことはワクチンに例えると効果(免疫付与)も強いが副反応(合併症)も一番強いワクチンが自然感染という風に言えるかもしれません。ワクチンに100%の効果を求めると自然感染そのものと同じになるし、0%の副反応を求めると効果は期待できなくなります。よって最大限の効果と最小限の副反応のバランスの上でワクチンが設計され、医薬品の中でも最も追跡調査されているものの一つだと思います。
ワクチンとの因果関係がつかめない接種後の有害事象が大きく報道されることがありますが、ワクチンの効果についてはあまり報道がないようです。例えば1950年代には麻疹(はしか)数千~2万人、ポリオ 数百~1千人、百日咳 1万~1万7千人、ジフテリア 2千~3千人、破傷風 2千人 が年間亡くなっていましたが2014年にはそれぞれ0人、0人、1人、0人、9人になっております。ワクチンがいかに多くの子どもの命を救ってきたかを改めて知って頂ければと思います。
第一は接種した個人が守られること(個人防衛)、第二は多くの人が接種することにより集団の感染症が減ること(集団防衛)、第三は集団の感染症が減ることにより、結果的にワクチンを接種できない弱者が守られること(社会防衛)、第四はWHOを中心に連携し地球上から可能な限り減らしていく事。
現在でもウィルス感染症の多くは根本的治療がありませんのでワクチンにて防げる病気から子どもや大人を守りましょう。予防接種の普及により色々な感染症が減り、一般の人にはそのような疾患が消え去った様な感覚もあるかもしれません。しかし過去の経験上、予防接種が中断されたりすると再びその疾患が流行し後遺症等で苦しむ人々が増えるような事を繰り返しております。よって継続した高い接種率を維持していくことが大切となってきます。
定期接種 (予防接種法で規定) |
ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻しん、風しん、日本脳炎、結核、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、B型肝炎、ヒトパピローマウイルス感染症、ロタウィルス |
公費負担 |
任意接種
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おたふくかぜ、インフルエンザ 定期接種の対象外となった方 |
自己負担 (一部公費負担) |
#定期接種ワクチンと任意接種ワクチンはどちらもその効果と安全性が十分に確認されており差があるわけでなく制度上の違いだけです。 どちらも重要なワクチンです。
次の予防接種までの間隔 |
ワクチン種類 |
ワクチン名 |
27日以上: 注射の生ワクチン同士の場合のみ |
生ワクチン |
BCG、麻しん風しん混合(MR)、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルスなど |
間隔制限なし |
不活化ワクチン |
ポリオ、四種混合、二種混合、日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎、Hib、小児用肺炎球菌、子宮頸がん予防 |
#弱毒化された生ワクチンの病原体は接種後1~3週かけて増殖しますが、その間に他の生ワクチンを接種すると互いに干渉して増殖が妨げられ、十分な免疫が得られなくなる可能性があるので27日以上空けることになります。他の組み合わせに制限はなくなりました。
*2020年10月1日より異なるワクチンの接種間隔が生ワクチン(ロタを除く)同士以外は間隔制限が撤廃されます。*
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000588558.pdf (下記の図参照)
#複数のワクチンの同時接種は可能です。日本での同時接種は約10年ほど前からなので歴史は浅いですが海外の国々では昔から行っておりその実績から安全性は確認されてます。またそれぞれの効果も落ちることはありません。別々に接種するよりも多くの病気に対して早く守られることが一番の利点ですが、接種直後の副反応に対する不安の回数が減る、通院の回数が大幅に減る、なども考えられます。早く免疫をつけた子どもが多くなるとその病気の発生も減少し社会的防衛にもつながります。
生まれた時お母さんからもらった免疫は生後6か月頃には減少しており、この頃から感染症にかかり易くなってきます。よってその時期までに予防接種の効果を上げるには生後2か月からの接種スタートが大切です。不活化ワクチンは複数回の接種により効果が出ますので生後6か月頃までに免疫付与を行おうとすると別々の単独接種では無理があります。同時接種の必要性をご理解頂きたいですが保護者の方の考えも尊重したいと思います
接種時に持参して頂くもの
・母子手帳(こどもの予防接種)・・接種歴を確認できないと接種できない場合があります。
・予診票(予防接種の種類により、個別配布、区役所・医療機関で入手)
・住所、年齢の確認ができるもの(免許証や健康保険証)
当院の予防接種スケジュール |
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年齢 |
定期接種 |
任意接種 |
1ヶ月 |
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2ヶ月 |
肺炎球菌① 五種混合① HB① |
ロタウィルス① |
3ヶ月 |
肺炎球菌② 五種混合② HB② |
ロタウィルス② |
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4ヶ月 |
肺炎球菌③ 五種混合③ |
(ロタウィルス③) |
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5ヶ月 |
BCG |
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7~8ヶ月 |
HB③ *日脳① |
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8~9ヶ月 |
*日脳② |
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10ヶ月 |
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1歳~ |
MR ① 水痘① 肺炎球菌④ 五種混合④ |
おたふく① |
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1歳半から2歳 |
水痘② *日脳③(追加) |
* 三種混合 |
3歳 |
日脳① → 日脳② |
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4歳 |
日脳③(追加) |
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5~6歳(年長) |
MR(麻疹風疹) ②
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おたふく② *三種混合 *不活化ポリオ |
9歳 |
日本脳炎二期 |
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12歳 |
二種混合 HPVワクチン(子宮頸がん) |
*三種混合 |
注1 HB:B型肝炎 Hib:ヒブワクチン MR:麻疹・風疹ワクチン |
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注2 1歳になったらすぐにMRを受けましょう |
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注3 日脳(日本脳炎)ワクチンは3歳からが標準ですが罹患のリスクにより乳児期からの接種も 行います。(定期接種枠内です) |
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注4 5~6歳頃、百日咳とポリオの接種が望ましい。四種混合の5回目接種はできないので 三種混合と不活化ポリオワクチンを接種するか、または1歳半ごろの四種混合④を三 種混合に変え、5~6歳で四種混合④を接種する。 (ポリオは4歳以上で追加接種するのが世界的標準) |
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定期接種対象外の年齢小児への接種(小児科学会の考え) | ||
**子宮頸がん予防ワクチンの希望者は対象年齢であれば定期接種(無料)となります**
HPVワクチンとDT(二種混合)は小学校6年生(12歳)での同時接種をおすすめします。
異なるワクチンの接種間隔の変更図
2020年10月1日から施行予定
<ロタウィルスワクチン>
ロタテック(RV5)とロタリックス(RV1)の2種類のワクチンがあります。いずれのワクチンも腸重積という病気の発症頻度の関係上、週齢14週6日(月齢3か月半ば)までに1回目の接種をしましょう。RV1は週齢24週0日までに2回目、RV5は週齢32週0日までに3回目を終えなければなりません。また同じ種類に統一して接種するのが原則ですが、里帰り等の事情などで種類が混在した場合は2回目の種類にあわせて3回目の接種をしたほうが良いでしょう。
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