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筋肉注射あれこれ

COVID-19ワクチン注射方法についてやや混乱があるようだ。三角筋の筋肉注射において以前から教科書的には肩峰から3横指下の三角筋中央部とあり、今回日本医師会もプライマリーケア連合学会の動画を引用し2~3横指下としている。しかしちょうどそのあたり(3横指下すなわち約5cm下)には腋窩神経の枝と後上腕回旋動脈が横切っているため、もっと下の前後の腋窩ひだ(脇の上端)を結んだ線の三角筋中央部を勧める方法もある。この場合試してみると刺入点の位置決めが(特に着衣が多いと)あまり簡単ではないように思える。また肩峰から10㎝程度下、すなわち三角筋のボリュームが少ない場所となり針先を筋肉内に留める難しさもあるように思える。骨膜にあたることも避けたいし、また皮下注になっては免疫原性低下となる(局所副反応の増加)。では3横指よりもっと上の部分での接種はどうかとなると関節の滑液包への穿刺、誤注入のリスクが高まることになる。肩峰から3横指下近くには神経、血管があることは解剖学的にも、多くの論文からも明らかなのに長年、3横指下という表記が継続されているのはなぜだろう。結局、刺入点が測りやすい、筋肉量が保たれる(確実な筋注が望める)などを重視し、神経分布は肩峰から5cm以遠(6,7㎝まで)に多いので、肩峰から2~3横指の範囲で穿刺し、痛みやしびれを問いかけることにより神経損傷を回避すれば良しというところだろうか。

被接種者の腕はまっすぐ自然に垂らした状態なのか、肘をまげ腰部に手を当てた状態にするのか、・・

腰に手を当てると上腕が内旋し後側にある橈骨神経を間違って損傷するリスクが増加するとのことだが

指先を下方に向けたまま肘の曲げると内旋はあまり気にしなくてよさそうにも思える。立位で腰を曲げての接種は人数が多いと腰痛持ちには厳しい。その他、接種部位は皮膚を張る方法、または筋量を感じるため摘み上げない程度に大きく保持するなどの違いもある。

またバイアルから吸引した針と接種する針の交換の必要性については、CDCなどは清潔操作が保たれているなら不要としているが職業感染防御研究会などはバイアル穿刺時のコアリングのリスクから交換を奨めている。できるだけ操作手順が少ない作業のほうが良いようにも思えるのだが・・。

 

まとめると、 2~3横指下(2.5横指をめざして)中央に注意深く、痛み・しびれを必ず聞きとる、持ち上げないで大きく筋肉を保持、肘の曲げ伸ばしは接種状態によって選択(橈骨神経は意識)、針交換は米国CDC方式、・・・。現時点では。